Duress Wallet は、所有者が資金へのアクセスを明かすよう強要される事態に備えたウォレットです。特別な PIN で開く場合も、異なる passphrase を使う別のウォレットである場合もあります。アクセスと情報の構成であり、Bitcoin のコンセンサス規則でも、強要が終わる保証でもありません。
特別な PIN を入力すると、端末が別の鍵の集合を開き、そのモードから通常のウォレットにはアクセスできなくなる場合があります。その出力は本物であり、使用すれば実際の支払いになります。おとりという表現は意図した役割だけを指します。Duress Wallet という名称だけでは、導出方法、利用可能なメニュー、副作用は定まりません。保護を評価するには、端末の状態、その状態で使える鍵、アクセスを要求する相手の知識を区別する必要があります。 [COLDCARD — PINs and Trick PINs] [EFF — Your Security Plan]
BIP39 ではバックアップの単語と passphrase が seed の導出に使われます。正規化されたどの passphrase からも有効な seed が得られるため、入力ミスはパスワードエラーではなく、通常は空の別ウォレットを開くことがあります。一方、PIN は通常端末のロックを解除するもので、それ自体が標準 BIP39 導出を定義するわけではありません。Trezor で再びアクセスするには、元と完全に同じ passphrase と正しいバックアップが必要です。別ウォレットを作れることは、その端末が Duress PIN を備えることや、既存ウォレットの追加 passphrase を単純に変更できることを意味しません。 [BIP 39 — Mnemonic code for generating deterministic keys] [Trezor — What is a passphrase?]
COLDCARD の文書は、主 seed を消去しない Duress Wallet と、seed を消去してから選んだウォレットを開く Wipe → Wallet を区別しています。BIP85 の3種類と旧式の Legacy Wallet が挙げられています。24単語の seed では BIP85 のインデックスは 1001–1003、12単語では 2001–2003 です。Legacy は m/2147431408h/0h/0h を使います。これはこの実装の仕様であり、全ウォレット共通の標準ではありません。別の端末や古いファームウェアの同じ表示が、異なるパス、単語数、動作を意味する可能性があります。 [COLDCARD — PINs and Trick PINs]
BIP85 は、完全な hardened パスと追加の HMAC 処理を通じて、BIP32 のルート鍵から用途別のエントロピーを導出します。導出された子だけを知っても親のルートは明らかにならない設計ですが、ルートが侵害されれば子を再生成できます。したがって、別のアドレスであることはバックアップや侵害リスクの独立性を証明しません。個々の Duress Wallet について、主ルートから復元できるのか、別の passphrase が必要なのか、本当に別の seed を持つのかを確認すべきです。共通のバックアップがあっても、正しいモード、パス、インデックスの知識は必要です。 [BIP 85 — Deterministic Entropy From BIP32 Keychains]
BIP39 は、異なる passphrase がいずれも有効であることによる、別ウォレットの存在をもっともらしく否定できる可能性を説明しています。これは導出の性質であり、ほかに資金がない証明ではありません。購入記録、既知のアドレス、保存済みの公開鍵、過去のアプリへのアクセスは、相手の期待を変え得ます。COLDCARD は SSSP の文書で、主 PIN を知る人は XPUB を取得して残高を把握できると明記しています。その後で別のウォレットを示しても、信用されるとは限りません。ただし、オンチェーン上の関連だけで所有者の身元が自動的に証明されるわけでもありません。 [BIP 39 — Mnemonic code for generating deterministic keys] [COLDCARD — Single Signer Spending Policy]
設定によって Trick PIN は、開くウォレットを変えるだけの場合、seed を消去する場合、端末を永久に使えなくする場合があります。これらの効果を混同してはいけません。ローカルの鍵のコピーを消しても、ブロックチェーンの出力や別のバックアップは消えません。復元情報がそろっていれば、資金は別の場所で使用できる場合があります。その情報がなければ、所有者自身がアクセスを失います。破壊的な反応でも、攻撃者の行動を予測可能な形で制御できるわけではありません。機能の説明は、危険な状況で起動することの推奨ではありません。 [COLDCARD — PINs and Trick PINs] [EFF — Your Security Plan]
復元計画には、主ウォレットと別ウォレットの関係、必要なバックアップ、使う passphrase、実装のパラメーターを記録する必要があります。端末の PIN はこれらの代わりにならず、通常の単語バックアップだけでは忘れた BIP39 passphrase を復元できません。設計の検証には独立したテストデータと既知の受取アドレスを使い、再起動の前後で正しいモードか確認します。破壊的な選択肢を、実際のウォレットの唯一のコピーで試すべきではありません。何らかのウォレットが開いたことより、期待したアドレスの一致のほうが強い確認になります。 [Trezor — What is a passphrase?] [BIP 85 — Deterministic Entropy From BIP32 Keychains]
評価では、電源を切った端末の盗難、バックアップの侵害、人に対する直接の強要を区別する必要があります。各状況で相手の能力と情報は異なります。Duress Wallet は開示するアクセス範囲を変えられますが、ほかの資金の秘匿や身の安全は保証しません。計画では扶養する人、復元の可用性、誤操作の影響を考慮し、定期的に見直すべきです。端末のテストが示すのは端末の動作であって、強要下の人間の予測可能な反応ではありません。そこから、万人に安全なおとりの金額を導くことはできません。 [EFF — Your Security Plan] [COLDCARD — Single Signer Spending Policy]
理解を深めるには、この項目とあわせて次もお読みください BIP85, BIP39 passphrase, Hardware Wallet, セルフカストディ, Secure Element, Seed Phrase.